みやけエコネット

ノート地球の波動、音楽、
そして人をミックスさせたい

- 指揮者・山本郁夫さんインタビュー -

芸術を三宅島の産業にしたい

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――「三宅島<歌と踊りの祭典>2006」はどんなきっかけから企画されたんですか?

山本 僕たちは実は、「三宅芸術村構想」というプランを持っていて、今回の祭典はその第一歩という位置付けです。なぜ音楽家のわれわれが、そういう音楽以外のことに目を向けるようになったかというと、支援活動を通じて行政とお付きあいしたり市民レベルのお付きあいを始めていくと、現実が見え出すんです。これはまずい、これはまずい、と思ってしまうことがどんどん見えてくる。行政の問題点というのを僕は神戸でひしひしと感じました。三宅島も、今はまだ建設関係の人など復興事業にたずさわる方が島外からたくさん来ていますが、あと数年でこれが一段落したら、外から来る人が誰もいなくなってしまう。これは、三宅島の皆さんよりも、むしろ僕のような人間の方が強く感じることかもしれません。

三宅島にはもちろん素晴らしい大自然がありますが、大自然なら例えば白馬にも奄美大島にも沖縄にもある。その上で必要なのは、やっぱり“人”の力だと思うんです。観光客が来たときに、三宅島の人たちが感謝の気持ちを持ってその人たちをもてなす。そういうもてなしとはどういうものなのかを、三宅島の外からたくさん人を呼ぶ祭典を通じてみんなで考えよう、ということがまずあるんです。

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三宅島<歌と踊りの祭典>2006」に参加する東京モーツァルテウム合唱団の皆さん。この日は4月9日に開催される支援コンサートの練習をされていた。山本さんの指導はハイテンションでありながらとても緻密。

――普通なら、そういう現実が見えても実際に行動に移すまでには至らない人が多いと思うんですが、山本さんの場合、そうやって物事をどんどん進めてしまうエネルギーの源は何なんでしょうか?

山本 正義感かもしれないね(笑)。あとはやっぱり人情。僕もはみだし者だからね。最初は音楽の超エリートコースをいっていたけど、嘘ばっかりの世界にだんだん虚しくなってきたのね。でもここには嘘がないから。現実も含めて全部が本当。あと、こういう支援活動はいわゆるボランティアだから僕が趣味でやっている活動かというと、そうでもないんです。僕のライフワークでもある「聴衆を育てる」ということにつながっている。音楽の本質に直結しているんです。


「三宅島<歌と踊りの祭典>2006」は7月14日(金)~17日(月・祝)の開催で、15日と16日がメイン。三宅小学校、三宅中学校、アカコッコ館などを会場に、神戸と東京からオーケストラと合唱団を呼んで第九のコンサートを開いたり、ポップスや歌謡曲の歌合戦など盛りだくさんの催しが企画されています。祭典にかかる費用は、山本さんが東京・神戸で4月と7月に開く支援コンサートや、祭典に参加する人から参加費を募ることでまかなうのだそう。山本さんはいま、祭典の実施をサポートする人たちを固めようと各方面に働きかけたり、支援コンサートの練習を指導したりと精力的に動く“巨大な台風の目”なのだそうです。

三宅島に行くと地球を感じる

――山本さんが初めて三宅島に行かれたのはいつですか? 体験記写真

山本 お付きあいが始まってからだいぶ経ってからですね。皆さんが帰島したあと、2005年の7月です。

――最初はどんな印象でしたか?

山本 港の周りの白くなった木が白樺に見えて、あれ、ここロシアかなと思いました(笑)。

――三宅島ではまだ火山ガスが出ていますが、行くときは心配ではないですか?

山本 僕はあんまり感じない。都会のスモッグの方が苦痛ですよ。ガスはなんだか神秘的。僕は三宅島に行くと地球を感じるんです。ガスで出てきたり、こう、溶岩が流れ出た跡がそのまま残っていたり、神社の鳥居がそのまま火山灰に埋まっていたり。そういうのを見ると、やっぱり地球なんだなぁと思いますね。三宅島の場合はそれが災害だから、人が明らかに影響を受けている。それも大きいと思います。あとはあの荒波。僕は阿古の海辺で水泳をしたんだけど、波が痛い(笑)。正直言って、波の勢いが怖かったです。だから、自然を感じるという意味では、三宅島はすごくダイレクトですよね。

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音楽にも似たところがあります。以前、老人ホームに三宅島の人たちを訪ねたことがあって、そのとき3人のおじいちゃんおばあちゃんがいがみあってケンカしていたんですね。それで、僕がそのおじいちゃんおばあちゃんに「まあ分かるけどさ、今度三宅島の人たちが来るからそのときは一緒に三宅の島節歌ってもらうからね」って言ったら、そこで島節が始まっちゃって、みんなで大泣きしてるの。一緒になって歌いながら、私が悪かったよーって。おもしろいよね。やっぱりそれは、音楽の力。人を許せるという感性や、相手に対する思いやりが広がっていくんですね。例えば、絵は見ようという意思がないとそれが持つパワーを感じることはできないけど、音楽は波動で直接体に伝わっていく。地球のバイブレーションとも関係していると思います。道祖神を祭ったり、神様に祈りを捧げたりという行為には必ず歌舞音曲が入っている。それは人間の本能なんじゃないかな。だから、そういう意味も含めて、今度の歌と踊りの祭典が地球の波動とミックスしていくと、その土地と、島と、人間が融合していくんじゃないかと僕は思っているんです。


芸術にたずさわる専門家や愛好家が全国から三宅島を訪れ、島の施設を利用して創作や発表活動を行う―。そんな「三宅芸術村構想」を温めている山本さんには、実はロシアの劇場から常任監督のポストのオファーがあるのだそう。「でも、情が邪魔してなかなかそっちに行けないんだよね。神戸や三宅の仕事をやり残しているから。でもいいじゃない、そういう生き方も」。

人一倍よく動き、笑い、大きな声をあげてみんなを三宅に向かう渦に巻き込んでいく山本さん。7月にはどんな音楽の荒波が島に上陸するのでしょうか。三宅島の大自然がきらめく夏に、またひとつ楽しみが加わりました。

聞き手:みやけエコネット編集部

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山本郁夫(やまもと・いくお)
指揮者。神戸市生まれ。1981年愛知県立芸術大学声楽科学後イタリアに留学し、帰国後卒業。88年東京芸術大学音楽部指揮科に入学。小澤征爾やP.シュトルマーレの助手を務め、オペラを中心に研鑚を積む。98年より阪神淡路大震災被災者復興支援コンサートを主催。02年には三宅島民合唱団「アカコッコ」を立ち上げ、災害からの復興に向けての事業についてもきめ細かい心くばりでたずさわり、多くの人々の共感を得ている。現在、ロシア国立ヤクーツク歌劇場正式指揮者。

三宅島<歌と踊りの祭典>2006
会期:2006年7月14日(金)~17日(月・祝)
会場:三宅小学校、三宅中学校、アカコッコ館
歌の祭典(ベートーベン「第九」、ジャンル別歌合戦など)、室内演奏会(東京芸術大学声楽科学生および卒業生による歌曲、ピアノ独奏曲など)、声楽レッスン、カラオケ講習会、盆踊りなど

事前プラン
神戸21世紀復興記念コンサート2006/三宅島民支援プロジェクト
2006年4月9日(日)大田区民ホール アプリコ(大) 14:00開演
J.S.バッハ作曲「ロ短調ミサ」
*開演前に三宅島民合唱団「アカコッコ」のロビーコンサートあり
三宅島支援「第九」コンサート~歌と踊りの祭典・プレ演奏会~
2006年7月12日(水)大田区民ホール アプリコ(大) 19:00開演
問:03-3298-5159(東京ルネサンス倶楽部) http://www.amadeus.or.jp
*みやけエコネットでは、今後も<歌と踊りの祭典>2006の情報を随時お伝えしてまいります。

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