その日は、朝から奇跡が起きました。前日までの強い風と、南から忍び寄る台風4号。海に入ることは無理かもしれない……。そんな不安を裏切って、風が止んで空には薄日が差すお天気。干潮の長太郎池も、外海の影響をさほど受けず、いい感じに凪いでいます。
子どもたちは、この日のために学校のプールでスノーケリングの練習をしてきました。海に囲まれた島の子どもといっても、ちょうど小学校低学年にあたる年齢のころを2000年噴火の全島避難で島を離れて暮らしていたため、中には海にあまり親しんでいない子もいます。
でも、さすが島っ子、練習すればスノーケリングができない子は一人もいません。朝9時過ぎ、バスに乗った子どもたちがさかなクンの待つ長太郎池にやってきました。長太郎池では、「どうぶつ奇想天外!」の撮影チームも準備万端。海の中には水中カメラマンさんもスタンバイしています。
「今日はさかなクンと一緒にスノーケリングでお魚を観察します。あとでイラストに描けるように、みんなよーく観察するんだよー」
子どもたちは、Tシャツの色別に3つの班に分かれてスノーケリングをします。各班のリーダーには、『三宅島の自然ガイド』で海の生きもの図鑑のページを担当された三宅高校の池田先生、三宅島生まれ長太郎池育ち(?)を自負する大学生の穴原奈津さん、アカコッコ館の江崎レンジャーという強力メンバーがガイド役として参加してくれました。さかなクンは、各班を回りながら一緒にお魚を観察します。
みんなで準備体操をして、いよいよ長太郎池へGO!
子どもたちは、とにかく最初はおおはしゃぎ。長太郎池には初めて入るさかなクンも、負けずに大興奮の様子です。が、しばらくすると、子どもたちはふと静かになりました。マスクを通して見る長太郎池の海中世界に、次第に夢中になっていったようです。
リーダーが教えてくれたウツボの棲みかでウツボを観察したり、セダカスズメダイが卵を守る様子を見たり。溶岩で囲まれた50mプールほどの大きさのタイドプール長太郎池は、カラフルな海草やサンゴが海中を彩る中、いろいろなお魚の生態をじっくり安全に観察できる、格好のフィッシュウォッチングポイントです。知らない魚を見つけては、「さかなクンこれ何?」 好奇心もどんどん湧いてくるようです。
黒Tシャツチームの男の子が珍しいお魚を見つけました。「ミヤケヘビギンポだ!」
「さかなクーン!」 呼ばれてやってきたさかなクン、「すごーい! よく見つけたねー! 近くで見てみよう」
体長5cmほどのヘビギンポの仲間、ミヤケヘビギンポは、三宅島で初めて発見されたお魚。恋の季節には、オスの体が婚姻色と呼ばれる濃い色に変わることで知られています。ミヤケヘビギンポを取り囲んだ子どもたちとさかなクン、静かに、じっと、観察を続けました。
「みんな、ミヤケヘビギンポはこんなに小さな体なのに、大きな波が来てもさらわれないのはどうしてだか分かる?」とさかなクン。
水から顔を上げた子どもたち、「吸盤がついてるのかな?」「ううん、吸盤はついてないんだよ。ミヤケヘビギンポには大きな胸ビレがあるでしょう、この胸ビレで、岩にがっしりつかまることができるから、大きな波が来ても流されないんだよ」
観察したその場で、そのお魚の体の不思議についてさかなクンに教えてもらう―。子どもたちにとっては貴重な体験だったに違いありません。
30分ほどスノーケリング観察をしたあとは、岸にあがって磯場を観察します。小さなタイドプールにも生きものはいっぱい。触ると危険なウニの仲間ガンガゼを見つけたり、昨日の授業でさかなクンがイラストに描いてくれたカエルウオを発見したりと、見つかる生きものは尽きません。
海の中や磯をたっぷり1時間半ほど観察し、長太郎池でのフィッシュウォッチング授業が終了しました。「ニシキベラがいた!」「カンパチっぽい魚もいたよ!」
ただなんとなく生きものを見るのではなく、その場でさかなクンにいろいろと教えてもらったり、魚はどんなところに暮らしているか、どんな色や形か、体のどこを動かして泳いでいるか、そんなことを意識しながらの観察は、子どもたちに海の生きものを一歩も二歩も身近な存在にしてくれたようです。
さかなクンありがとうー!」
「みんな、明日もよろしくねー!」
お魚のイラスト…みやけエコネットにアップ・・・つづきはこちら
次のページへ
1
| 2
| 3
| 4
|